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古の知恵とエビデンスその4~ピーカンナッツの殻の研究

みなさん、
梅雨明けが待ち遠しい毎日ですが、昨年の8月のような酷暑もまた困ったものです。台風も心配ですね。コロナのこともあり、なかなか心休まりません。でも不安に打ち勝つ強いメンタルも必要です。そんな時は意識して規則正しい生活をおくり、自然免疫を活性化させるように腸内細菌に頑張ってもらいましょう。良い食事、睡眠、軽い運動、そしてお風呂、ですね。

さて、今回は「古の知恵とエビデンスその4~ピーカンナッツの殻の研究」です。ピーカンナッツの栽培が盛んな地域である米国中西部~南部の大学では、農学部を中心に多くの科学者らによって研究がなされ、数多くの論文が発表されています。そして遠くブラジルでも。
ブラジルでは、東アジアと同じように、お茶を健康管理に利用する健康茶、薬用茶の概念があるようです。そのような文化背景では研究も盛んになり、2018年のJosiane Hilbig先生の論文(Journal of Ethnopharmacology 211, 256-266, 2018)では、ピーカンの殻のお茶が乳がんのモデルマウスで有効性の検討がなされています。こちらはあくまで動物実験の研究なのですが、有効性もみられているようです。Hilbig先生の論文の考察にあるように、確かに、レスベラトロールや他のポリフェノール類、フラボノイド類には様々な薬理活性があり、一部のがん細胞に効果をしめるという報告もあります。ヒトにおける効果は今のところ不明ですが、研究の発展、すなわちエビデンスレベルの更なる向上が期待されます。ところで少し調べたところ、ブラジルでもピーカンナッツの栽培が行われいてるようでした。季節が反対の南半球では、たしかオーストラリアでも栽培されているはずです。
また、ピーカン殻のお茶をヒトが飲む以上、食経験があるとはいえ、その安全性もとても気になります。そこで、ピーカンのお茶に含まれる成分を濃縮して安全性試験も行われました(L Perto et al., Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine Volume 2016, Article ID 4647830, 8 pages)。こちらはかなり濃縮して研究に用いられていますが、ポリフェノール等による副作用はなく、得られた所見からミネラル類(マンガン、アルミニウム、銅、鉄など)の大量摂取に起因すると考察されています。通常、お茶として飲む分としては問題はないと思われますが、飲みすぎ、食べすぎは何事もだめですね。規則正しい食生活、規則正しいライフスタイル、この基本は守りたいと思います。

次回からは「ナッツ類のエビデンス」について、様々な視点からシリーズ紹介します。
それではまた。

続く

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