サイエンス カフェ

閑話休題;時間栄養学とは?

みなさま、
曇り空と蒸し暑さ、午後には雷雨の注意報、と不安定な毎日ですが、いかがお過ごしでしょうか?大雨による災害もさることながら、熱中症や、なによりコロナへもどうぞご用心ください。

さて、これまでのサイエンス・カフェ第一期では、自然免疫を活性化させるための取り組みとして、腸内細菌、良い食事、睡眠、軽い運動、お風呂、などをキーワードに、科学的なエビデンスをいう切り口を添えてブログを綴ってきました。
良い食事をとることの対局にあるのが食生活の乱れです。これはとても重要なことで、たとえば朝食を摂らないことが肥満の危険因子であることなどが、すでに科学的に証明されています(Ma Yら、Am J Epidemiol. 158:85-92 (2003))。Ma先生らによるこちらの研究では499人の被験者のうち朝食をしっかりととる人にくらべて摂らない人は、肥満になる危険度がおよそ5倍であることがわかりました。
食事として摂取され炭水化物がエネルギーとして燃焼されるのではなく、脂肪に変換されて組織に過度に沈着していく状態が肥満といえます。このとき、脂肪合成の重要な役者がBmal1(ビーマルワン)というタンパク質ですが、面白いことに、Bmal1の活性は朝6時~14時はほぼゼロであり、14時から徐々に増加し増加、夜間に極大となり、朝6時にかけて減少していきます。このように時間とともに活性が変動するため、Bma1は時計遺伝子(に由来するタンパク質)の仲間とみなされています(Alexandra J. Trott,Jerome S. Menet, Regulation of circadian clock transcriptional output by CLOCK:BMAL1. PROS GENETICS https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1007156 (2018))。このような学問を最近では時間栄養学と呼ぶようです。

そう、このことが食事をとるタイミング、そしておやつを摂るタイミングに関係しているわけです。もし、みなさんが「ケーキを食べたい!!」となったならば、Bmal1の活性がゼロに近い時間帯に食べるべきかもしれません。3時のおやつ(15時のおやつ)であれば、Bmal1の活性がほぼゼロなので、ケーキの高カロリーが脂肪へ変換されにくく、したがって太らない!と理論的に考えられるわけです。かつてのTVコマーシャルにあった「3時のおやつは文明堂」のカステラ(https://www.bunmeido.co.jp/c/lp-castella.php)は理にかなっていたわけですね!

次回は「古の知恵とエビデンスその4~ピーカンナッツの殻の研究」を紹介します。
それではまた。

続く

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