みなさん、
梅雨後半の豪雨災害の報道を耳にするたびに胸が締め付けられます。これ以上、被害が大きくならないことを祈るばかりです。皆様、どうぞご自愛ください。
さて、再開第2回では、「古の知恵とエビデンス」について述べたいと思います。古(いにしえ)の知恵、と聞いて、皆さんはどのようなことを思い浮かべるでしょうか?私は、子供のころに母によく言われた「鰻と梅干を一緒に食べてはいけない。」です。ものによっては食べ合わせの妙というものは確かにあるようなのですが、どうもこれは迷信のようです。
他には、「風邪をひいたときは生姜湯」でしょうか。文献にもよりますが、かなり古い昔から、生姜(英語ではジンジャーですね)は、体調管理をもたらす食材として重宝されていたようです。胃液の分泌促進作用によって消化吸収を整えたり、末梢組織では血流を改善して体を温めてくれると言われています。現在では科学的な研究がかなり進んで、生姜に含まれる辛み成分としてジンゲロンやショウガオール(その名の通りの物質名ですね!)が同定されており、こういった抗酸化物質が体の機能を整えていることが分かってきています。詳細は Μ. Afzal らによって執筆されたレビュー Ginger: An Ethnomedical, Chemical and Pharmacological Review(Drug Metabolism and Personalized Therapy | Volume 18: Issue 3-4, 2001)に記述されています。
このような祖父母から親へ、親から子へ、と言い伝えられていく知恵は、迷信として伝わっていくものもあれば、確かな効能、効果として伝わっていくものもあるかと思います。なんとなく効くかもしれない、なんとなく良いかもしれない、そういったものを科学的に証明していく作業が科学者の役割です。Afzal先生、すごいと思います。生姜の場合は、このレビュー論文が生姜の価値を確固たる立場に押し上げたと言っても過言ではないかもしれません。現代では、科学者のみならず、そういった古の知恵をもとにビジネスにかかわる企業の、とても重要なミッションとも言えます。
ところで、サイエンス・カフェ#2でお伝えしたあま酒もまた、夏バテ防止の観点からすると古の知恵ですね。江戸時代にはすでに飲まれていたわけですから。そして現代、その有効成分が5-ALA(5-アミノレブリン酸)と科学的に証明されたことは、これもまた「エビデンス」と言えるかもしれませんね。
次回は「古の知恵とエビデンス2」として、ナッツについて紹介します。
それではまた。